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ヴァンフォーレ甲府 佐久間悟社長との対談

未来を語る【You More対談】

株式会社ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ 代表取締役社長 佐久間悟

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一般社団法人 甲府青年会議所 理事長 東原広幸

 

「プロヴィンチア(地方都市)の挑戦」

 

 

一般社団法人 甲府青年会議所(甲府JC)の東原広幸理事長が、山梨県内で活躍する各界トップと地域の未来を語る「You More対談」。

第一弾は、県民に勇気と希望を与えているサッカーJ2ヴァンフォーレ甲府(VF甲府)の佐久間悟社長と甲府JCシニアでもある井尻真理子さん =株式会社ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ所属= の二人と対談を行いました。

長く交流を続けてきた両団体の軌跡を振り返りながら、多角的な視点を持って地域貢献に取り組むVF甲府、甲府JCの現在地と将来ビジョンを熱く語り合いました。

高き理想を掲げるプロヴィンチア(地方都市)の挑戦は続きます。

 

―――存続の危機から天皇杯優勝まで VF甲府とともに歩んだ甲府JCの軌跡

佐久間社長:山梨の次世代を担う経営者の方々が所属する甲府JCには、長きに渡って様々な面でお支えいただいています。

 

東原理事長:甲府JCに入会した当時から、VF甲府は身近な存在でした。

甲府、山梨の魅力を県内外に発信することができるVF甲府の活動に携わることができて感謝しています。

 

井尻さん:甲府JCシニアの立場として、両団体の歴史を振り返ると、多くの方に応援していただき、縁をつないでいただいています。

2000年12月にVF甲府に存続の危機が訪れた際、募金活動をしていただいたり、子どもたちをスタジアムに無料招待していただいたり、と本当に助けてもらいました。

当時の甲府JCメンバーが、クラブが存続できるか分からないような大変なときに、VF甲府が天皇杯で優勝して、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)の試合を専用スタジアムで開催するという大きな夢を語っていたことが思い出されます。

たくさんの支援によって存続決定した後もハーフタイムに選手や観客が寄せ書きしたビッグボールを作ってまわしたり、フェイスペイント、シンポジウムを開催していただいたりとご協力をいただいてきました。

2010年に開催されたホームタウンサミットでの分科会では佐久間社長も参加して、「VF甲府は山梨県の無形文化財としてスポーツ文化の向上に資することができる。リニア開通がスタジアム建設の千載一遇のチャンスだ」と語っています。

 

佐久間社長:山梨、VF甲府にサッカー専用スタジアムをつくりたいという強い志を持って、当時、話をさせてもらいました。

 

井尻さん:「スポーツに力を」というテーマで選手が小学生に夢を語るトークショーや「VF甲府 山の都駅伝」も開催していただきました。サッカー以外の事業を展開できたのは甲府JCの支援があったからです。現在もスタジアムではフェイスペイントを継続していただき、今後も良い関係を続けていきたいです。

―――地域とともに歩むスポーツクラブ

東原理事長:サッカークラブでありながら、「まちづくり」など山梨全体の経済発展に向けた前向きな取り組みを進めているのがVF甲府だと思います。

 

佐久間社長:2008年から甲府でお世話になっています。

当時から素晴らしいと感じているのは、存続の危機があったからこそ、支えてもらっている皆さんの“魂”、それに応えないといけないという“責任感”が良い形で循環している。

私どもが行う地域貢献活動は恩返しであり、VF甲府の力の源泉になっています。

 

東原理事長:VF甲府はSDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みを早い段階から進めていたと思います。

 

佐久間社長:持続可能な社会を目指して、リユースカップなどの取り組みを継続してきました。

コストと時間がかかるため、他のクラブが止めていった中で、協力してくれる団体や個人の方々と価値観を共有しながら進めてきたのは、地域の皆さんとの共生を目指すVF甲府だからこそできているのではないかと思います。

 

東原理事長:山梨に移り住んで16年がたち、地域の魅力をどう感じていますか。

 

佐久間社長:武田信玄公の時代から、甲州商人の功績などを振り返ると「連帯と連携」に加えて、常に「知恵」や「創意工夫」を凝らして主体性を持って社会をつくってきたのが山梨だと思います。

志のある県民が集い、まだまだ古き良き時代の日本がここ山梨にはあります。

 

東原理事長:VF甲府はプロヴィンチア(地方都市)としての挑戦を掲げています。

青年会議所も明るい豊かな社会の実現という目標を持って活動しています。

まちづくりの方向性として、山梨県そして県民の皆さんに期待することは何でしょうか。

 

佐久間社長:人口減少に伴う労働人口の減少、産業の空洞化が問題となる中、山梨では県が中心となってスポーツと観光の一体的な取り組みを進めています。

かつて郷土の偉人・小林一三氏は「庶民の手の届く範囲での小さな娯楽」を打ち出しました。

生きがいを持つためには娯楽は不可欠であり、そういった意味でフットボールという誰でも楽しめるツールが山梨にはあります。

県民の皆さんにVF甲府というコンテンツを活用していただきたいと思います。

―――悲願の専用スタジアム建設に向けてリニア開通は「千載一遇のチャンス」

東原理事長:開業が延期となりましたが山梨にはリニア中央新幹線の中間駅が甲府市大津町に建設されます。高速鉄道によって都市部と短時間で結ばれるリニアインパクトと佐久間社長が訴えるスタジアム構想がつながる可能性はありますか。

 

佐久間社長:ドラスティックに時代が変化するときは千載一遇のチャンスでもあるはずです。

ただ、リニア開通もスタジアム建設も私たちの力でできるものではありません。

民間の投資によるスタジアム建設もありますが、まずは、山梨県と甲府市を中心とする行政のご理解とご協力は不可欠であり、どの様な手法が山梨県にとって、またVF甲府にとって良いのか、様々な議論をする必要があります。

県民の皆さんと近い存在としてVF甲府があり続けるための最善の方法を慎重に考えていきたいと思います。

 

―――目指すべき人材育成とは 「心に火を付ける」

東原理事長:VF甲府は日本代表で活躍する選手を育成してきました。

どのような考えのもとに育成をおこなっているのでしょうか。

 

佐久間社長:どの選手も入団前から全てがトップクラスではなくても、良いところを評価して弱いところを底上げしていくことが成長につながります。

哲学者であり教育学のウィリアム・フォードは「偉大な教師は心に火をつける」という言葉を残しています。

自らの強みを自覚してもらい、本気にさせる。

指導者が一人一人の考え方に寄り添い、覚悟を決めさせることができれば成長を促すことができるはずです。

 

―――日本一の発信力を目指す

東原理事長:理事長に就任するにあたり、日本全国の青年会議所の中でも甲府JCが最も発信力のある存在になろうと目標を定めました。

20~30年前に比べて青年会議所のイメージは変化しており、ネガティブな印象を与えることもあります。

地域に根差して活動する我々としては、より良い情報を発信できるよう取り組んでいるところですが、夢と希望を与えるスポーツクラブとして意識しているところはどこでしょうか。

 

佐久間社長:時代の流れで活字離れ、テレビ離れが進み、若い世代は狭い世界での価値観に偏ってしまう危険性があります。

VF甲府は山日YBSグループをはじめ、UTYやNHKなどの地方放送局に支えていただいてきた歴史があります。

地方メディアとの関わりを大切にすることが重要である一方、時代に即して独自の媒体をどう活かすかに注力もしています。

4年ほど前からYouTubeを配信しており、今後はスポンサー企業とタイアップするなど、山梨を国内外に発信する企画も考えていきたいです。

 

―――甲府JCとVF甲府の未来予想図

東原理事長:VF甲府の天皇杯優勝や日ごろの活動を通じて、山梨への帰属意識が高まったと感じています。

理事長を務める中で、スポーツも取り入れて「山梨に生まれてよかった」「山梨に住んで良かった」という帰属意識を持ってもらえるような地域や青少年事業を展開していきます。

甲府JCとして、理事長として、今後も積極的にVF甲府の活動に関わっていきたいと思います。オール山梨で取り組みを進めていきましょう。

 

佐久間社長:青年会議所の卒業は40歳で、若い世代の皆さんが青少年事業やまちづくりに取り組んでいます。

私自身も40歳前後の若い社員に大きな仕事を任せるようにしています。

良きカウンターパートナーとして、若い世代の皆さんがともに山梨の未来を考えるきっかけを作っていきましょう。

単体での発信では限界があります。

ぜひ、甲府JCと一緒に色々な取り組みをしながら、外に発信していきましょう。